古文に学ぶ恋愛①「和泉式部日記」家に上がりこみたい男の必死の言い訳

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平安時代の文章に描かれた、男女の恋愛。
その中には、現代の男女にも当てはまるような記述がある。

今回は、平安時代に描かれた「和泉式部日記」の一場面から、家に上がりこみたい男の必死の言い訳について考えてみたい。

「和泉式部日記」とは

平安時代に和泉式部が執筆した日記文学だ。(筆者他人説も根強い)

筆者の和泉式部は、恋多き女性として知られる。
夫と別居後、天皇の皇子である為尊親王と交際。
さらに、為尊親王の死後は弟である敦道親王と恋愛関係になってしまう。
敦道親王の邸宅に暮らしていた時は、本妻が怒って出て行ったそうだ。

和泉式部と天皇の皇子たちの恋愛は、身分違いの恋として、当時の平安京中で話題となったそうで、紫式部も、「和泉はけしからぬかたこそあれ(和泉式部は感心できないところがある)」と書き残している。
和泉式部は、当時の「恋多きお騒がせ女」だったようだ。

そんな和泉式部だが、恋愛に関する和歌はさすがに情熱的な秀歌が多く、勅撰和歌集である「拾遺和歌集」に複数の和歌が採録された他、百人一首にも採られている。
また、娘の小式部内侍も和歌の達人として知られ、和歌の発表会前に四条中納言(藤原定頼)に「お母さんからカンペをもらわなくていいのか」とからかわれ、「大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立」と和歌で見事に切り返したエピソードでも知られる。

さて、和泉式部日記は恋多き女である和泉式部が、恋人の為尊親王の死の悲しみ、弟の敦道親王との恋愛を記した日記文学である。
さらに、為尊親王も、敦道親王も、軽薄男子として知られていたらしい。
和泉式部日記は、軽薄男子と恋多き女のラブストーリー。
我々が読んで学ぶべき古典といえよう。

為尊親王の死を悲しむ和泉式部の元を、敦道親王が訪れる。

恋人の死を悲しむ和泉式部。
そのもとに敦道親王が一本の橘の花を送ったことから手紙のやりとりがスタートする。

敦道親王は、「兄が死んで寂しいんですよね、兄に似てる僕が代わりに慰めますよ」といった、軽薄な手紙を何通か送り、見事和泉式部からの返信を勝ち取る。

和泉式部は、亡くなった恋人が忘れられない気持ちと、恋愛したい気持ち、さらには亡き恋人の弟に揺れる罪悪感に悩みながら、敦道親王との文通を続ける。
その後、何往復か手紙のやりとりをするうちに、「脈ありかも」と思った敦道親王は、和泉式部の家へ、ノンアポで押しかける。

以下が原文だ。

「しのびて、物へ行かむ」とのたまはすれば、さなめりと思ひてさぶらふ。あやしき御車にておはしまいて、「かくなむ」と言はせ給へれば、女、いと便なき心地すれど、「なし」と聞えさすべきにもあらず、昼も御返り聞えさせつれば、ありながら帰したてまつらむも、なさけなかるべし

意訳すると、

敦道親王が、「こっそりと、あそこ(=和泉式部の家)へ行こう」とおっしゃったところ、従者は「まあそうだよな」と思った。
皇子が外出してるとばれないよう、わざとぼろめの車で行って、「来たぞ」と言うと、和泉式部は「いきなりかよ、困ったな」と思ったけれど、今日の昼も手紙返信したから居留守使うのも悪いかと思った。

ノンアポで押しかけられると困るのは現代と同じである。
そして、少しでも情があると断りづらくなるのも、現代と同じだ。

続きは、

ものばかり聞えむ、と思ひて、西の妻戸に円座さし出でて、入れたてまつるに、世の人の言へばにやあらむ、なべての御樣にはあらずなまめかし。これも、心づかひせられて、ものなど聞ゆるほどに、月さし出でぬ。いとあかし。

意訳すると、

和泉式部は、「まあ話ぐらいしてやるか(けど家の中に入れたらヤっちゃうな)」と思って、敦道親王のために西の縁側に座布団を出してやった。和泉式部は、「やっぱり敦道親王ってかっこいいなあ」と感じ、話も盛り上がっていると、月が出て、明るくなった。

とにかく、部屋にあげるとヤっちゃうなと感じた和泉式部は、敦道親王を縁側に座らせ、話すことにした。
初対面ではあるが、ルックスもよく、話も楽しい。
気づけば夜である。

いつまでも縁側にいるわけにはいかない。部屋に入りたい敦道親王がとった行動は・・・?

話が盛り上がるのは結構だが、敦道親王は、「今日は和泉式部を抱いてやる」と思って家まで来ている。
このまま縁側で話すわけにはいかない。

敦道親王は当代きっての軽薄男。
頭の回転もよく、遊びなれている。
そんな敦道親王は、事態を打開するため、とんでもない言い訳を口にする。

原文だと、
「ふるめかしう奥まりたる身なれば、かかるところにゐ慣らはぬを、いとはしたなき心地するに、そのおはするところにすゑ給へ。よも、さきざき見給ふらむ、人のやうにはあらじ」

現代語では、
「僕は古風奥ゆかしい人間だから、部屋の奥に行きたいな〜。めっちゃ心細いから、君の横とか座るのどう?まあこの先しっかり付き合うし、他の男みたいに絶対ワンチャン狙いじゃないよ」

カスのような言い訳だ。
「奥」ゆかしい人間だから、「奥」に行きたい
聞いているこちらが恥ずかしくなってくる。
さらに、やる気満々に「ワンチャン狙いじゃないですよ」主張までしている。

これを受けて、和泉式部は、

「あやし。今宵のみこそ、聞えさすると思ひ侍れ。さきざきはいつかは」

「何言ってんねん。今夜会うだけやろ。この先っていつやねん」

と思ったと書き残している。
敦道親王は撃沈というわけだ。

その後、部屋には入れないままに夜は更けていき、「このままじゃあかん!」と思った敦道親王は、もう一歩踏み込んだ会話をするのだが、続きは次回に。

現代と同じように、平安時代でも部屋に上げてくれ!と粘る会話が繰り広げられていたのだ。

ちなみに筆者は、「トイレだけ!トイレだけしたら本当に帰るから!」と言って家に上がりこみ、
「シャワーだけ!シャワーしたら秒速で帰るよ」と畳み掛けて、殴られたことがあるゾ。

以上、古文に学ぶ恋愛①だった。

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