地蔵のふりして女を落とせ!古文に学ぶ恋愛③-沙石集第2巻6話『勘解由小路の地蔵』

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前回は平安時代の女性の日記に見られる男女の恋愛、その駆け引きを紹介した。

今回紹介するのは、美女を落とすために策略を練った男の、哀れな恋の結末である。

男は、時たま女を口説くために策略を巡らせる。
終電をなくしたふりをしてみたり、「みんなで遊ぶよ」と伝えておいて、「全員ドタキャンだって」と言ったり。
こういう策略はうまくいかないものだ。
そして、他人の失敗した策略の話を聞くのは面白い。

以下の話は、鎌倉時代に書かれた仏教説話集「沙石集」の第2巻、6話にある「勘解由小路の地蔵」からである。

勘解由小路の地蔵にお参りする美しい女性

鎌倉時代、勘解由小路に、霊験あらかたな地蔵があったという。
京都中の男女がこぞってお参りするほどだったそうだ。

お参りする人々の中に、美女がいた。
物語は、ここから始まる。

以下、原文である。

若き女房の、見目かたちなびやかなるが、常にまうでて通夜しけり。また、若き法師の常に参籠しけるが、この女房に心をかけて、いかにしてか近づかむずると思ひけるあまりに、同じくは本尊の示現の由にて、近づかむと思ひ巡らすに、

ざっくり意訳すると、

若いOLで、めっちゃ綺麗な女の子が、毎日地蔵に徹夜でお祈りしていた。同じく若いお坊さんでいつも地蔵に参拝していたお坊さんが、この女の子を「いいな」と思って、どうにかして落としたいと思いつめた結果、「地蔵のお告げ」のふりをしてなんとか近づいてやろうと思い巡らしていると

占いに通う女性を「簡単にヤれそう」と思うように、毎日地蔵にお祈りする女性を「簡単に落ちそう」と思うのは当然だ。
坊さんといえども若ければ煩悩の塊。
美女をみると我慢はできない。
「地蔵のふりでもして落とすか」と思っても不思議ではない。

ある時、チャンスが・・・!

この女房、宵のほどつとめし疲れて、うち休みける耳に、「下向のとき、初めて逢ひたらむ人を頼め。」と言ひて、立ち退きて見れば、ほのぼの明くるほどに起きあがり、女の童起こして、急ぎ下向しけり。

ざっくり意訳すると、

このOLは、明け方祈り疲れて、まどろんでいた。お坊さんはその耳に「帰り道で初めて会った人がお前の運命の人やで」と言って身を隠した。美女は朝起きて、女召使を起こして急いで帰った。

まどろんでいた美女の耳に突然響くお坊さんの言葉。
毎日地蔵に参るほど純粋な美女は、「あ、地蔵のお告げだ!」と信じてしまう。
このお坊さんは、地蔵のお告げのふりをして、初めて会う人が運命の人だよと告げたのだ。勘のいいDappy読者のみなさまであればお坊さんの魂胆はわかるだろう。
そう、お坊さんは急いで美女に追いついて、「さっきのお告げにあった運命の人ですが、何か?」という顔をして会いに行くつもりなのだ。

急いで続きを見ていこう。

僧は、しおほせつと思ひて、出で合うひて行き逢はむとするほどに、履物を置き失ひて、尋ぬれども見えず。遅かりぬべければ、履物うち片方履きて、さきざき下向する方を見おきて、勘解由小路を東へ行かむずらむと、走り出でて見るになし。

ざっくり意訳すると、

お坊さんは、「やったぜ」と思って、早く美女に会いに行こうと急いでいると、置いていた靴が見当たらない。遅れちゃダメだと思って、片足だけ靴をはいて、以前までの美女の通り道である勘解由小路を東方面へ行っただろうと思って、走って出たが姿が見えない。

何としても美女が最初に会う人にならなければいけない。
お坊さんは急いで向かおうとするが、靴が片方ない。
ええい、と片方の靴だけで急ぐあたりはかなり好感が持てる。
気持ち悪いことに、通り道もリサーチ済みである。
ところが、そちらを見てもいないのだ。
その瞬間のお坊さんの慌て具合を想像したら笑えてくるだろう。

消えた美女。いったいどこへ・・・?

この女房しかるべきことにや、鳥丸を下りにぞ行きける。

運命なのだろうか、坊主が勘解由小路の東を探しているちょうどその時、女房は烏丸通を南に進んでいた。

そして、その先にいたのは、供のものを4,5人も連れた金持ちそうな男。
美女はためらいながらも、「地蔵のお告げで、最初に会った人が運命の人と言われたんです」と告白。
おそらくその頬は赤らんでいただろう。

一方、そう言われた男も、長年連れ添った妻と3年前に死別したばかり。
若くて可愛い女性にそう言われたからか、「これも仏の思し召しだろう」と馬に乗せて
そのまま連れて帰り、結婚。
やはりこの男、田舎に土地を持つ金持ちであったそうで、美女は大変幸せに暮らしたという。
「嘘から出たまこと」のことわざ通りの、ハッピーウェディングなお話である。

さて、金持ちが余裕を見せつけているところで気になるのは、お坊さんである。
彼はどうなってしまうのか?

お坊さんの運命は?

この法師は、縦さまに走り、横さまに走り、履物片方履きて、汗を流し、息を切りて走り巡れども、なじかは行き逢ふべき。

意訳すると、

このお坊さんは、街中を走り回り、靴は片方だけ、汗もだらだら、息切れしながら美女を探して走り回ったが、出会えるはずもない。

気持ち悪い姿で走り回っているところ残念だが、美女はもう金持ちにもらわれてしまった。走ったところでムダである。

夜も明けぬれば、あまねく人に問ふに、「さる人は、しかしかの所へこそおはしつれ。」と言ひければ、心のあられぬままに、その家の門に行きて、「地蔵の示現にはあらず。法師が示現ををこがましく。」とののしれども、「こは何事ぞや。ものくるひか。」と、言ふ人こそあれ、用ゐる人はなし。

ざっくり意訳すると、

夜も明けてしまい、いろんな人に「あの美女どこいったか知りまへん?」と聞きまくる。すると、みんなは「ああ、あの美女なら金持ちと結婚したよ。地蔵のお告げらしいね、運命だね」と答える。お坊さんは、我慢できず、金持ちの家へ行って、「お前らが信じとるんは地蔵じゃなくて俺のお告げやぞ!!信じるなんてあほちゃうか!」と叫び回るが、「なんかヤバいやつおるわ」と相手にされない。

お坊さんは半狂乱で探し回るが、見つからない。
ついには、金持ちの玉の輿に乗ったという情報を手に入れる。
ムカムカしたお坊さんは家の前で、お前たちが信じている地蔵のお告げは嘘だよ、バーカ!!と叫びまくったということだ。
もちろん、信じてくれる人などいるはずもない。

こうして、一人の幸せになった美女と、一人の往生際の悪い男が誕生した。

伝統・権威が崩れ始めた鎌倉時代

以上が仏教説話集「沙石集」の第2巻、6話である。
鎌倉時代は、伝統的な仏教の威厳が崩れ始めた時代であった。
坊主も性欲や食欲があり、煩悩にまみれている。
一方で、庶民でも信仰深ければ幸せになれる。
こういったメッセージ性のある説話が多く記された時代である。

他人の駆け引き、策略の話は面白い。
更に、うまくいっていないものであれば尚更だ。

なお、筆者は、「Aちゃんって靴箱の中ちょっと片付いてないことってありそう」や、
「暗いと思われてるけど実は明るいよね〜」「たまに暗くなって悩んじゃったりしそうだよね」と誰にでも当てはまることを言い続け、「この人私のことわかってる!!」と思わせる「ガバガバ占い師」メソッドをよく使うぞ!
外した時も動揺せず「そうだよね〜」と軽く受け流すのが肝心だ!

この記事を書いた人 solty
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